【通行止め】

私事ですが、20年以上むかし、夏もおわりの頃のこと。

サラリーマン時代、兵庫県へ出張し、新神戸駅からレンタカーを借りて、農村地帯にある事業所を訪問した夕刻の帰路のことです。折から接近中の台風のため、午後から降り出した大雨で、帰る方向の国道が冠水し通行止になっていました。通行止め地点にミニパトと合羽を着た警察官が立っていて、河川が決壊し神戸方面の道路はすべて通行止めだとのこと。あきらめて引き返し、今日の訪問先でも頼ろうとしたところ、いま来た道の反対側も冠水、通行止めになっているのです。

 

知らない田舎で、1kmほどの間に閉じ込められたわけですが、しょうがないので車で一泊しようと思い、道端の冠水した電話ボックスに膝まで浸かり会社へ帰れない旨連絡し、腹が減っていましたがどうしようもなく、閉店中の鄙びた酒屋の店先の自動販売機で缶ビール3本とおつまみ缶3つを買い込んで、高台の道路に車を止めて車中で一泊。

 

当時、当然ながら携帯電話もインターネットもカーテレビもありませんので、車のラジオを聴きながら、眠れず朝まで車中で過ごしました。いちばん困ったのは、レンタカーなのでタオル一枚なく、小さなハンカチで雨をぬぐったことでしたね。あとはエアコン全開で服を乾かす。

 

激しい雨が夜通し窓ガラスを叩くなか、カーラジオから杉山清貴とか、杏里とか、角松敏生とか夏っぽい曲が流れる合間に、時折台風情報が聞こえていました。

朝方うとうとしていると、雨も止み、日が昇ってきて、初秋の快晴が眩しく、冠水も引き通行止めも解除になって、何事もなく新神戸駅へ帰りました。

 

通行止めでどうなることかと思いましたが、独り夏のおわりのキャンプのようなものでした。

 

一般社団法人ABD協会