【豊穣】

昔、ヨーロッパの人々がいかに貧しかったかお話しします。

 

麦類などのタネを播いて、どのくらい収穫できるかを示したものを、播種収穫倍率(はしゅしゅうかくばいりつ)といいます。一粒のタネが何粒になるかを倍数で言い表したものです。

 

大麦や小麦というのは、コメに比べてたいへん効率の悪い植物で、古代ヨーロッパでは1倍から2倍、一粒播いて、たった一粒かふた粒にしか成りません(笑 「ヒトツブコムギ」なんて種もあります)。

そして、中世で2倍から3倍、15世紀ごろでせいぜい5~7倍しか収穫できませんでした。ようやく10倍を超えるようになったのはなんと19世紀に入ってからで、品種改良が進んだ現在は15~17倍、アメリカで20~25倍となっています。また、土壌にとても恵まれている現在の日本では50倍を超えることも珍しくないそうです。

 

ところが、古代に驚くべき高収穫を上げることのできた人たちが存在しました。古代メソポタミア文明の担い手であった、シュメル人たちです。

紀元前2350年ごろのラガシュという都市国家の、粘土板でできた当時の行政経済文章には、大麦は播種量の80倍の収穫を上げることができた、と記録されています。この、他の地域に比べて圧倒的に高い食糧生産力が、人類初の都市文明を築き上げた原動力になっているのですね。

やがて、チグリス・ユーフラテス川周辺の土壌塩化が進み、250年後のウルク期には20倍まで下がってしまいますが、それでもヨーロッパでは、播種量の20倍には現代に至るまで到達できませんでした。

そして皮肉なことに、そのシュメルの地、現在のイラク南部は、砂漠化が進み、全く不毛の地となってしまっているのですが・・・

 

東京大学農学部の大学院教授だった、生源寺眞一(しょうげんじしんいち) 先生が書いた本『日本農業の真実』等を読むと、世界の人口が増えて食料不足になる、というのは後先が逆のデマで、人類史では、食料生産が増えるから人口が増える、とするのが正しいそうです。

 

ちなみに、現在日本のコメの収穫率は130倍前後となっています。水田で稲作ができる日本をはじめ、アジアの人口密度がなぜ高いのか、ご理解いただけると思います。

 

 

一般社団法人ABD協会