【ある農民の危し】

芥川龍之介のエッセイに次のようなものがあります

少し長いですが要約してご紹介します。

 

芥川一家が田舎の一軒家に引っ越したときのこと。

高名な作家が越してきたというので近所の人がワイワイとお祝いにやってきます。

 

その中のいかにも素朴な農民の男が畏れ入った様子で、もし暇があったら、わしが書いた小説ですので読んでみてくださいと一束の書付を持ってきました。

さっそく読んでみると内容は次のようなものでした。

 

田舎の尋常小学校とある先生のクラスに、貧しい百姓のせがれであるが、算術がとてもよくできる少年がいた。

 

先生は彼に数学的才能を見出し、ぜひとも高等小学校、さらに中学へ進学して数学を学びなさいと勧めたが、しかし少年は頑として受け付けない。

 

「うち貧しいので、自分すぐに働かなければいけません。学費も出せません。小学校へ通うのさえ働き手が減ると両親は反対でした。ですから進学は諦めます」と。

 

それでも先生は惜しいと思い、少年の家を訪ね、学費はが出しますからとまで言ったが、少年の親もやはり猛反対で、けっきょく進学はかなわなかった。

 

それから月日が流れ0年ほど経ったある日、先生の元へ、大人になったその少年が訪ねてきた。

 

「先生、わしはあれから百姓をしながら、自分で数学の勉強を続けていました。それで長年の工夫のすえ、自の公式を発見いたしましたので、正しいものかどうか、先生みてください」という。

 

差し出された公式を見た先生は「あゝ・・・」とひとりごちてまう。

 

彼の発見はまさに素晴らしいもので、よく考えられた正確なものであったが、その公式は「二次方程式」であったのである。

上級の学校へ進めばすぐに学ぶものであった。

 

読み終えた芥川は、訝しげに「これはひょっとすると、本当の話かね?」と農民の男に訪ねます。

するとは「ええ、その少年はわしのことですから」と答え、芥川はひどく落ち込んでしまったという。

 

芥川が暗くなったのは、貧しさのため学校へ行けない現状を嘆いたこともあろうが、無学いうことによってあたら才能無駄に浪費されてしまことが本であろう。

 

これは論語の「思いて学ざれば則ちし(独断で考えてばかりで、他から学ぶことをしなければ危険だ)」に通じる話です。

 

いかに優れた思いつきであれ、ひとりよがりは無駄な回り道をしてしまう、ということのようです。

 

 

*エッセイのタイトルは忘れました。むかし一度だけ読んだものなので、内容も若干異なるかもしれません。