【クオ・ヴァディス】

19世紀ポーランドの作家、ヘンリク・シェンキェヴィッチという人の小説に、『クオ・ヴァディス』があります。

読まれたことのある方は、クライマックスが印象深かったことと思います。

 

 

老使徒ペテロと、ひとりの少年が、夜明け前のアッピア街道を南へ向かっていた。ローマ帝国の迫害を逃れるため、信徒らに薦められるままに、深夜を待ってローマを脱出したのだ。

東の空が朝日に染まるころ、朝もやの中、道の向こうから、光り輝くものが近づいてくる。すっかり老いたペトロは、光の中に、若き日のイエスの姿を見る。

疲れ果て、道端に跪き、涙にむせびながら、問う。

「あぁ、主よ、どこへ行かれるのですか(クオ・ヴァディス・ドミネ?)」

ペテロの耳に、キリストの声が響く。

「あなたが私の民を見捨てるなら、私はローマへ行って、もういちど十字架にかかろう」

傍らの少年には、何も見えず、聞こえなかった。

 

失神したようにうずくまっていたペテロは、やがて杖をとって立ち上がり、いま来た道を引き返すと、少年が同じ言葉を問う。

「クオ・ヴァディス・ドミネ?」

パウロは答える。

「ローマへ」

 

ローマに帰ったペテロは、パウロとともに殉教の死を遂げます。

 

命(めい)とは、まさに(いのち)のこと。

いのちとは、生ではなく、使命のこと。

 

ペテロが埋葬されたところに、現在のバチカン総本山、サン・ピエトロ大聖堂が立っています。