【数・関係性】

運命とは、いかなる原因によって定まるのか? 

ということを、ひとつの原因によってのみ説明することはできません。

 

これは個人ばかりでなく国家や企業の命運をたどってみても同様、会社がなぜ大きく成長したか、倒産していくか、国家がなぜ戦争を起こし勝敗を決したかなど、もしそれらがたったひとつの原因で説明されたならば、それはおそらくウソです。

 

株式相場でも「本日はFRBが利上げを見送ったことから買われました」とか「政府が増税の方針を撤回しなかったことから大きく売られました」などとわけ知り顔の評論家が毎日コメントしますが、それは複数ある要因の一つを後付けで説明して納得感を得るだけに過ぎず、これが本当なら政府や中央銀行は好きなように株価を操作できるということになりますが、けれど実際はそのようには動きません。

株価の変動や国家が戦争などに至るまでには、数千もの要因や数万もの人々の思惑が複雑に絡みあい、思わぬ効果を生み出し、当初の意図とは異なる方へ進行していくのが常です。現実世界では同等の手を持つプレイヤーがいくつも存在し、それぞれがかってにその日の都合や思惑で行動するので、結果の原因を一に帰すことなどできないのです。

 

人ひとりの運命も同様。本人が何かを決意して、ただ頑張るだけではどうにもならないし、あなたを取り巻く幾多の要因は互いに影響を与えあい、あなたが思う方向にいつでも転がっていくとは限らない。原因を単純化して求めることは古典的な科学の態度ですが、現代の思考はいまだ古風な科学的にすぎる。実際に現実を決めているのは、原因よりもむしろ関係性による過程の方なのです。

 

科学の分野でも30年ほど前、関係性を重視する「複雑系*」という試みが新たに物理学や生物学者、医学や数学者などの協力のもと為されましたが、範囲が膨大すぎて手に負えなかったのか、近頃では聞かれなくなりました。

自分の個性と世界の関係の構造を知るのが、数(すう)を見るということ。この方面は、まだまだ経験の蓄積による統計に頼るほかありません。

 

 

* 学界を超えて連携する複雑系の元祖は原爆開発で有名な米国のロスアラモス研究所です。