【伝統】

ヨーロッパの中世は、後世から「暗黒時代」と呼ばれています。

 

5世紀、西ローマ帝国が滅んだあと、北方を蛮族(ゲルマン人)が支配し、南欧では教会が世俗の政治をも統治し、新しいことや科学的なことは全否定。事の是非ではなく、ひたすら伝統を守ることだけが善とされました。これまでそれでうまくやってこれたのだから、いっさい変えるべきではないという超保守主義です。

その任に当たったのが、イタリア北部を教区とした小さなローマ教会ですが、南欧の聖俗を1000年近く統治した事で、やがて「バチカン」として強大な権力を得ることになります。

 

その後14世紀、アラブ先進主義の影響もあり、中世はルネッサンスで終わりを告げ、その反動からか真逆の時代風潮となり、徹底した合理主義と科学振興が盛んになり、錬金術から産業革命へとなだれ込みます。

産業革命はブルジョア階級を発生させ、王や貴族の力を衰退させ共和主義を生み、さらに民主主義の再興は社会主義を呼び出し、そして現代へと続いています。

その後、近代主義に疑いを持ったポストモダニズムなども登場もしますが、それもすでに死に絶え、新思想で生き残っているのは社会主義者が転じた環境主義くらいでしょうか。

 

ここ数百年で様々な新思想が現れましたが、中世を暗黒時代とする点ではみな共通しています。しかし、中世の保守主義を単に悪しきものと、切って捨てて良いものでしょうか?

 

合理的近代主義の台頭にいち早く抵抗したのが、当の産業革命を起こしたイギリスです。

憲法はその国における最高法ですが、しかし、イギリスは明文化された単一の憲法典を持つことを拒否しています。よって、あらゆる法の上位概念は王室ですが、その王室は王の恣意的な解釈ではなく、伝統や慣習法に拠っています。

法で扱えない矛盾が発生した場合、伝統に習って対処するのです。

 

日本国憲法は、我が国の伝統通り、タテマエとして機能しています。

これって日本らしくて、わりと賢い使い方だと思います。

毎週末、国会議事堂前でどんちゃん騒ぎをやっていますが、議事堂の中にいる人も外で騒いでいる人も、思想史と国柄の個性をもっと勉強してもらいたいですね。

 

一般社団法人ABD協会